「なあ達也…。」

突然左の席の真一が小声で話しかけてきた。

「あと何分か分かるか…?」

その声にはいつもの元気さがない。

時計はさっき見たばかりだが、

「あと19分だけど…。」

(まだ2分しか経ってない…。ああ、オシッコもれそう…。)

どうしても我慢できなくなったらトイレに行かせてもらおうと考えながら、
歯を食いしばって貧乏揺すりをしながら左手で膝のあたりをさすり、前かがみの状態で板書を写していると、
真一がなおも話しかけてくる。

なんだか泣きそうな顔をしている。

「むっちゃトイレに行きたい…。」

「え…?」

動揺して達也は左の少年を見た。

真一は両手で股間を抑えて下を向きながら貧乏揺すりをしていた。

「授業始まってからずっとガマンしてたんだけどな…。
 ションベンの音みんなに聞かれたら恥ずかしいし、サッキーもいるし…。」

両手で股間を握り、イケメンの真一が苦痛に顔をゆがめてうつむいている。

若い方の先生は解説中だし、
塾長さんも黒板を見ててこっちに気付かない。

いやそんなことより、頼むからトイレの話はしないでくれ〜。

「マジションベンもれそう…。あと16分か…。」

「トイレの話はやめろよ…。」

真一は驚いて達也の方を見る。

「オレまで漏れそうになってきちゃうじゃないか…。」

達也も両手で股間を抑えていた。

時折前をギュッと抑える。

眉をしかめ、前かがみでうつむいたまま貧乏揺すりをしていた。

達也は小声で言った。

「オレもさっきからずっとトイレをガマンしてるんだ…。
 頼むからそれ系の話はやめろ…。」

「あ、ごめん…。」

「いや…あ…ヤバい……。」

真一に尿意を訴えられるまではなんとかガマンできそうだったのに、
今となっては少年の半ズボンの裾からは、
ちょっと息をしただけでも大量のオシッコが溢れ出そうだった。

サキちゃんがトイレの前に座っていなければ、
2人ともとっくにトイレに行かせてもらってただろうが…。


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