あと9分。

ここで女講師の非常な声が響いた。

「最後にこの問題をやってもらいます。
 ちょっと難しいけど、丸が付くまでは帰れませんからね〜。」

「え〜!?」

といつもなら大声で言っていたであろう2人は、

不規則なため息とともに脂汗をかいていた。

「…やった、これで終われる…。真一、終わったらコンビニのトイレに駆け込もうぜ…。」

「オレもそこしか考えてないって…。」

幸いこれ以上延長の気づかいはない。

この後はここで高校生の授業があるからだ。

女の先生2人に先週から来始めた女子高生もいるため、
やはりあのトイレでするのはムリだ。

しかしガマンは今にも限界をむかえそうだった。

早く解かないと…。

だがどうしても分からない。

「せ…先生…、解き方分かりません…。」

真一が先生からヒントをもらおうとする。

たまらず達也も手を挙げ、塾長と若先生がそれぞれ解法のヒントを教える。

2人とも左手で股間を握りながら上体を前後に揺らし、先生の話を聞いている。

ヒントを言い終わると2人の先生は前の子の質問に答え始めた。

本当は2人も今すぐにでも後ろのトイレに駆け込みたかった。

だがイケメンとしてのプライドが、先生にトイレの許可を求めることに激しい羞恥心をもたせた。

(よし…できた…!)

「先生、オシッ……いやションベ……いやトイ……いや問題解けました…。」

真一が苦渋の中にいくらか安堵の表情で手を挙げる。

「達也、先にトイレに行ってくるからな…。」

「あぁ…、ズルいよ…。」

しかし達也には真一の方を見る余裕もない。

(やった〜、これでションベンに行ける…。)

だが先生の言葉は真一の期待を裏切るものだった。

「惜しいね真一くん、ここからの計算が間違ってるから、もう少し考えてね。」

「え?…そ…そんな……。」

(今にもションベン漏れそうなのに〜…。)

真一は泣きそうな顔でシャーペンを走らせた。

達也は苦しいため息をもらしながら、
最後の計算に手間取っていた。

もれる寸前になったら先生に言って後ろのトイレに駆け込むつもりだった。

だがなんとかまだもちそうだった。

今の今までガマンできたのだから。

(ああ…、何回やっても計算が合わない……真一は大丈夫なのかな?…ああ…オシッコしたい…。)

まだ最後の問題が解けた子はいなかった。


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